第60章 大正“幕引”ー始ー
無一郎くんが私の屋敷に戻ってきた。
隊服も無事届いた。烏もやってきた。しかし、随分と自己主張の激しい子ですね。ガラスよりやかましい。
刀も、カナモリという人がうってくれたようだ。良かった。私の側にいるから嫌な目に合うかと思っていたけど、そんなことはなかった。
「無一郎くん。」
「はい。」
常中も覚えた。鎹烏、日輪刀、隊服。
「良いですか。君はもう鬼殺隊士です。」
「はい。」
「今夜、初任務を言い渡されました。とはいえ、私の任務の補助ですが…。」
無一郎くんは真顔で、どこかぼおっとしていた。
ぶかぶかの隊服に着せられているようで、なんだかおかしい。
私はふっと微笑んだ。
「ここまで来たら何も言いません。というか、言うことがありません。褒めてあげたいのですが、鬼殺隊としてはこれからですしね。」
私は目線を下に落とした。
「……では、そろそろ行きましょうか。」
「はい。」
「緊張しますか?」
「いいえ。」
「そうですか。」
無一郎くんと私は、夜の中へ二人で一歩踏み出しました。