第54章 大正“浪漫”ー陸ー
雨にずぶ濡れになったまま担当地区を見廻った。
こんな日に限って鬼が溢れ出た。
「ハァッ……ハァッ…」
ドスッと地面に刀を突き刺す。
地面に膝をつくと、バシャッと地面の水がはねた。
台風か嵐かで、朝になったかならないかわからないほどだった。いつもなら太陽が上る時間にまだどしゃ降りの雨が降っていた。
「………くっそ…。」
息が整わない。今日はガラスがいない。夜になってもアイツが来ないとかある?まあ鬼がどこにいるかは気配でわかるけど…。アイツ無一郎くんを追いかけたな。あんの野郎。私より家出少年かよ…。
でも、嫌われてる私より……無一郎くんのお世話を優先したいよね、アイツもさ…。
あーぁ。雨。嫌だな。視界も悪いし。
………ていうか今晩いったい何が起こったんだろ。全然わかんないや。
まさかまさかで、阿国?みたいな…何か幽霊みたいなのに会っちゃうし、いよいよお迎えが近いのかな。
…でも、もういいか。
あーだこーだ言っても、変わらないものは変わらない。
「………」
帰ろうかな
でも無一郎くんいないし、焦らなくても
じゃあどっか行こうかな
こんな嵐の中どこに行くんだ
………帰りたいな
ものすごーく、元の時代に帰りたい
私はここじゃ一人なんだ
行く場所も会う人もいない
あ、でも帰らなきゃ
あんなボロボロの屋敷放ったらかしにしてたらいよいよ潰れちゃう
………ああでも…体、動かないや…
水飛沫をあげて私は倒れこんだ。
水たまりが真っ赤に染まる。
攻撃を受けた体に、容赦なく雨は降り注いだ。