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キメツ学園ー未来編【鬼滅の刃】

第48章 空模様


こんなところに来たらもう会えないなと思っていたけれど、実弥は来てくれた。


「!」


入るやいなや慌ただしく私の側に来た。


「……」


その顔を見て、色んなことを思い出した。


そういえば、明日は結婚の挨拶に行くって、約束してた。



口を動かす。もう声は出ない。

実弥がじっと私の口を見つめる。



「バカ野郎、そんなこと言うんじやねェ」



実弥がうつむく。

目にじわじわと涙がたまっている。


「俺をおいていくな…!!!」


私はまた口を動かした。

『ごめんね』『ありがとう』


その繰り返し。

けれど、私は穏やかだった。特に何も焦りや不安がなかった。それが不思議だった。


私は大丈夫だし、これから先も実弥と一緒にいると、なぜか確信を持っていた。


それを伝えることもなく、機械が変な音を出した。


ゆっくりでも一定の間隔を保っていた心音計がピッ、ピピッ、……ピッ、と乱れ出した。

先生や看護士さんが部屋に入ってくる。

けれど機械や私の様子を見ただけで、なにもしなかった。


急に目蓋が重い。


「先生ッ」


おばあちゃんが涙声で言う。けれど、横目で見える先生は首を横に振った。


「………ッ!!!」


目を開けるのも辛い。もう駄目だろうか。


「待て!!そんなの、許さねぇ!!許さねぇぞ!!!」


実弥が私の顔を見下ろして言う。

けれど、もう目の焦点が合わなかった。



実弥も見えなくなってしまった。


「!!目ェ開けろ!!」


目が完全に閉じた。


「ッ!!!」


実弥が私の手を握る。ぎゅっと抱きしめる。


「俺と…俺と、一緒にいてくれるんじゃねえのかよ、なあ………」


実弥が左手の薬指の指輪に触れる。実弥の指にも私があげた指輪の感触があった。仕事の時は外してって言ったのに、つけてたのかな。


「…」


実弥が私の名前を呼んだあと、私はピーーと、長く伸びる無機質な機械音を聞いた気がした。




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