第46章 障壁
その日の夜、帰ってきて実弥の部屋で一緒に寝ている時に彼は珍しく聞いてきた。
「なあ、悲鳴嶼さんのことなんだけどよ。」
その話はいっさいしてこなかったのに。
「知りたいんだ。」
面と向かって何かと思えば、そんなことだった。
「それを知ってどうするの?君は嬉しいの?」
私はそう返した。
「…嬉しくはねェ。……でも、このままだとモヤモヤしちまうんだよ。」
「………どうせ聞いたってそんなこと言うでしょ…」
「言わねェ」
「言わないようにはするけど言いたくなるかもしれないからちょっと心配です、と。」
「……感情読み取るなよ」
実弥が大きなため息を吐いた。
「……あのね」
私はじっと実弥を睨み付けた。
「誰にも共有したくない思い出ってあるじゃない。悲鳴嶼先輩との関係は“それ”なの。」
「あー」
実のは眉間にシワを寄せて、がしかしと髪をかきむしった。明らかにイヤそうだ。
「ねえ聞きたいのか聞きたくないのかどっちなの!?」
「あ~…!!うるせえうるせえ!!」
「理不尽ッ!!」
実弥はしばらく暴れたあと、再び落ち着いた。
「よし、聞かせろ。」
「いや無理ですよ話せませんよ。」
「………。」
何とも言えない顔になった。
……なんか今日は面倒くさいな。
「実弥くん、例えばどんな話が聞きたいのかね」
「シンプルにあの霧雨さんの悲鳴嶼さんが二人で何をしていたのかめっちゃ気になる」
「好奇心かよ」
まあそんくらいなら…。
「手合わせしたり、滝行したり、岩動かした。」
「………してそうだな。」
「私達をなんだと思ってたのですか?」
前世の私っぽく言ってみると、実弥はわかりやすく目線をそらした。