第44章 準備
しのぶとわかれ、家に帰ってきた。
今日は仕事しない。オフの日にしようと決めていた。
「……ねむー…」
何だか猛烈に眠い。
太陽の差し込む窓辺。フローリングにごろ寝。腕の中には可愛い可愛いおはぎ。
これはもう抗う理由もない。
「ねぇおはぎ、実弥は喜んでくれると思う?」
ああドキドキする。渡すならはやい方がいいと思うから、帰ってきたら渡すと決めた。けれど、緊張するなあ…。
「私は本当に実弥が大好きなんだよ!」
私はうとうとしながら勝手に話した。
「大好きだからさ、失いたくないし、これからも一緒にいたいんだ。そう思うと大切な人がいるってちょっと怖いよね。けど、私は今が楽しいし幸せなんだ。」
おはぎはじっと私を見つけてみた。
「……お前、本当に無一郎くんと同じ目だね。」
懐かしい目。愛しい目。
あの子は…どうしているんだろうか。
「ねぇ、私は本当に正しかったのかな。間違ってなかったのかな。あの子を連れて帰って良かったのかな。拒めば良かったかな。」
こんなことを言っても反応はない。声は虚しく部屋の中で消えていった。
「……わかんないねぇ…」
だって、私は死んじゃったんだから。
それに、あの子も死んだ。