第44章 準備
そろりそろりと忍び寄る。
実弥はすうすうと寝ている。
私はその指にそっと手を伸ばした。左手の薬指。そっと巻き尺を巻き付ける。
……よし。
サイズがわかったところで、私はそそくさと退出した。
良し。ナイス第六感。実弥が起きないように忍び寄るなんて朝飯前なのよ、ふふふ。
さあ、明日は買い物だ。
早速大きなデパートのジュエリー店に立ち寄った。
実弥がくれた指輪はシルバーで、小さなダイヤがある。それを話しかけてくれた店員さんに見せた。
「あの、これと似たもので…サイズは…」
何だか恥ずかしくてゴニョゴニョと小さな声で言うと、にこにこ笑って持ってきてくれた。
「こちらはいかがでしょうか?」
何個か見繕ってくれた。
……実弥ってどんなのが好きだろう。何かこれは飾りついててかっこいいし…。
しばらくうんうん悩んだあと、目につくものがあったのでそれにした。
「あの、これ…お願いします。」
「はい。」
私は店から出て、それの入った紙袋をぎゅっと握り締めた。
やっば~…すごい高い買い物しちゃった!いや、値段は良いの!!ていうか実弥に内緒で良かったのかな!?サプライズもありだってネットに書いてあったし春風さんも言ってた!!
いやーどうやって渡そうかな…さりげなくでいいのかな。実弥はロマンチックに渡してくれたけど…。
「何してるんですか?」
「ぅわああぁッ!!!」
突然声をかけられて悲鳴をあげた。何人かが振り返ったので、慌てて口を閉じた。
「えと……あれ、しのぶ…?」
「はい。」
そこにいたのは綺麗な顔をした、キメツ学園高等部の制服を着た胡蝶しのぶだった。
「こんにちは、霧雨さん。……何か自分にご褒美ですか?」
「あっ、う、うん!しのぶは友達と遊んでるの?」
確かに今は放課後の時間だし、遊んでる高校生がいてもおかしくはない。
…カナエもしのぶには一応私と実弥のこと黙っていてくれているみたいだから、言うわけにはいかないし、何とか切り抜けないと。