第35章 一休み
電話をかけ直しても、実弥は出なかった。
タイミングが悪いのかうんともすんとも言わない。
結局、春風さんが夜中にかけてやっと繋がった。
「あ、もしもし。ええ、お元気そうで。……はい、はい、順調に回復していますよ…ただ、お仕事でお疲れのようですから、ええ、ゆっくりしてもらっています……。」
十分ほど話し込んで、彼は電話を切った。会話内容には聞き耳をたてないようにしていたのでどうだったかと聞くと、彼はにこにこと答えた。
「声が聞きたくなっただけだそうです。変な病気とかではなく安心した、と。」
「え、何それ実弥可愛い…!」
「ですねえ。」
春風さんはほっこりしたように笑った。
「ま、もう少しですから。」
「…何がですか……」
「さあ、何でしょう?」
含みのある微笑みを見せ、春風さんは優しく言った。
「ともかく、私はあなたが幸せであることを願っています。」
「………どうしたんですか、急に。」
「ふふ、どうしたのでしょう。」
春風さんは相変わらず意味深で、結局のところは教えてくれなかった。