第35章 一休み
「しばらくここに籠城すればよろしいではありませんか!」
春風さんが晩ごはんのときに、名案だとでも言わんばかりに言った。
「籠城…って」
「実は、実弥くんにさんをとられたようで少し悲しかったのです。私の可愛いいとこなのに…。」
……嘘、じゃないな。
「風邪が長引いたってことにしておけば良いではありませんか。」
「いえ、しかしですね。最近実弥の様子がおかしくってそれが気になるんです。それに…連休の日曜日を空けるように言われていて、何かあるみたいなので帰らないと…。」
すると、春風さんはカッと目を見開いた…と思えば、すっと目を細めた。
「…なるほど。……全て理解しました。」
「はい?」
「ならば尚更です!!しばらくここに籠城なさい!!そして私がッ!!!!!」
春風さんが立ち上がる。
そのあまりの勢いにぎょっとして固まっていると、彼は自分の胸を叩いて声高々に言った。
「この氷雨春風があなたの完璧なお世話をさせていただきますッ!!!!!!」
春風さんはあっはっは!!と笑う。
…何だこれ。
「………まあ…日曜日までに帰れるなら…タブレット持ってきたから仕事は再開できるし…」
「はい、もちろん!!頑張りましょうねぇ!!」
いや何をだ。
私はもはや諦めて、しばらく春風さんの家に居候することにした。