第31章 風柱
カフェで時間を過ごしたあと、私と優鈴は久々に体を動かそうと優鈴の自宅に来ていた。
何とこの男、自分の稼いだお金で道場を作り上げてしまったのだ。
「木枯らし颪!!!」
「八重霞!」
「木枯らし颪!!!」
「移流斬り!!」
「木枯らし颪!!!」
「ちょっと待たんかいッ!!!」
私が叫ぶと優鈴はピタリと動きを止めた。
「何?」
「何で同じ型ばっか使うわけ?」
「そーゆー気分ッ!!」
再び優鈴が動く。
優鈴の技は繊細で、隙がなくて、その分ちょっと遅いけど一撃がとても重い。
「木枯らし颪!!!」
「あああ、もう!!!」
私と優鈴は真剣にやりあった。
いつだったか、遠い昔の稽古とは違うけれど。
「最寄りの駅までは、彼氏を呼ぶんだね。」
別れ際、駅の入り口付近で優鈴が言った。
「どうかな。向こうも楽しんでいるみたいだし。帰ってないかもよ。」
「帰ってるんじゃない?」
「何それ。」
「勘。」
「ふふ、変なの。」
私はクスリと笑って、優鈴に手を振った。
「バイバイ、また遊ぼう。」
「うん。」
笑ったその顔がやっぱりフニャッとしていて、相変わらず締まりのない。
けれど、優鈴らしくてすごくいいところだと思う。
…ちなみに、実弥は帰っていなかったので一人で帰りました。でも、危ねえだろとか何で待たねえんだとかめちゃくちゃに怒られました。