第24章 青碧蒼
無一郎くんのことを思い出した。
私は空の青を見る時もそうだが、おはぎを見る時もそうなってしまった。
「どうした、元気ねえなァ」
実弥がフローリングでおはぎを抱きながら聞いてきた。
隣でそれをボーッと眺めていた私は慌てて首を横にふった。
「そんなことない、元気だよ。」
「……」
実弥はため息をつき、黙って私の肩に寄りかかって体重を預けてきた。
「えっ、何、重いです自分のデカさを自覚してください…!!」
「はァ~傷ついたなァ~彼女に嘘つかれるんだもんなァ~。」
「ぎゃー!ごめんごめん言う!!言うから!!」
実弥が額をぐりぐりと押し付けてきて、また体重を一気にかけてくるものだから私が音をあげた。
「……おはぎの目、無一郎くんに似てるなって思ったの。」
「………。」
私が言うと、実弥はどくどころか寄りかかったままだった。
「……時透…か。」
「………うん。」
実弥は何かを思い出すようにしばらく黙っていた。
「……ごめん……変なこと言った…。」
「謝んな。……大切にしてたんだろ。思い出して当然だ。」
実弥はぎゅっと抱き締めてくれて、しばらくそのままでいた。
そっちのけにされたおはぎが、時たま不機嫌そうに鳴いていた。