第22章 先へ
帰宅は夕方になってしまった。ご飯はもう外で買ってきた。外食ばかりだから、そろそろ作らないとな。
そして、我が家にやってきた猫はというと活発にリビングを動き回っていた。
「かわいい~!本当にかわいい~!!なんかポテポテ歩いてる!!」
もう私はメロメロだった。実弥がその間に冷蔵庫に買ったものを積めている。
すると、猫は自ら実弥の元へいってその足元で止まった。
実弥がしゃがむ。
黙って手を差し出すと、猫はその手にすり寄っていった。
……なにこの尊い世界。
「おい」
「はいなんでしょう」
「お前隙あらば動画とんのやめろ」
あ、バレてた!?
「え、だってこんなかわいい空間撮らなきゃ一生後悔しちゃう」
「はぁ…変なやつだなぁ、お前の飼い主は」
やばいんですけど話しかけてるんですけどかわいいんですけど私の彼氏。
「で、名前どうするんだァ」
「名前…あー…決めてない…」
実弥の手で一通り遊んだ猫はまたポテポテと部屋を歩き回った。
「実弥にそっくりだから実弥でよくない?」
「は?嫌だわ」
顔を見れば見るほど実弥に見えた。うーん、却下されたか…。
「カブトムシかおはぎか実弥だね。」
「なんで全部俺にちなんでるんだよ。」
「男の子だしカブトムシかなぁ…。」
「いやソイツ猫だから。」
そうなると、一つしか残されていない。
「おはぎ。」
「おはぎ。」
私が言うと実弥が復唱した。すると、猫がぴたりと動きを止めてパッとこちらを見た。
「「え?」」
じっとこちらを見続けている。
「おはぎ」
私が名前を呼ぶと、猫はポテポテとこちらにやって来た。
それを見て、実弥が吹き出した。私も笑ってしまって、しばらく二人で笑っていた。