第3章 素寒貧な男の手懐け方
あの雨の夜から1か月後。彼は時々家に遊びに来るようになった。
「お金は絶対に貸さないからね」
という約束で、家に来た時は上がることを許している。だいたいは素寒貧になった時に家にやってきて、私が作ったご飯を食べたり、一緒にテレビを見たり、――抱かれたり。
きっと彼にとっても私は性欲を発散させる相手にちょうど良いのだろう。でも私も、どこかで彼を求めているから、お互い様だ。
付き合う、という程に私たちの距離は近づいた訳ではない。そもそも彼はギャンブル狂で、仮に付き合って、その先があったとしても、普通の幸せは得られないだろう。
でも好意がないと言えば嘘になる。母親には彼氏と別れたことを言うと、心配性な母は新しい彼氏は?だの、お見合いは?がどうだとか色々聞いてくるけど、何となく新しい恋をする気にはなれなかった。
――ピンポーン。
こんな夜にやってくるのは、帝統くらいしか居ない。扉を開けると、やはりそこには彼が立っていた。
「またスッたの?」
この一言が挨拶代わり。でも今日の彼はちょっと雰囲気が違った。いつもなら負けてしゅんとした顔をしているのに、今日は真面目な顔をしている。