第2章 Take me in your heart
隣のカーテンは閉じていたように見えたが、タタラくんは一番先に更衣室へと走り込んでいたはずだ。もしかしたら声がしないだけで残っているのは私たちだけかもしれないが……。
口に当てられた手を取って、そっと引き剥がす。
悪いことをしているわけではないが、なぜか小声になってしまうのが少し笑える。
「急にごめんね。カーテン開いてたから思わず……ビックリしたよね」
「……べつに」
頭を掻き、首を傾げる。
外の騒ぎと逃げるように駆け込んできた私を比べて、どうしたのかと思っているようだ。
「大会のことアレコレ訊かれてさ、嫌になって喧嘩しちゃった」
へへっと笑ってカーテンを開けようと手をかけたが、清ちゃんがそれを止める。
思わずドキリと胸が跳ね、熱くなる頬を感じながら顔を上げた。
感情の読めない彼の目が私を見据える。
強く掴まれていた腕からするりと手が滑り落ちていく。清ちゃんが近くに立つと、仙石さんの時とはまた違った緊張が走った。
「俺がきいてもいい?」
「えっ」
「大会のこと」
「あー……清ちゃんなら、いいかな」
うん、と頷いて今更ながらスマホを仙石さんに渡したままだったことに気がついた。まさか他の写真を見ることはないと思うが、あまり良い気はしない。
ということで写真がないことを伝えると、話が聞ければいいのだとフォローを入れてくれた。どこかの誰かと違って大人な対応だ。
しかし、改めて話をと言われると何を話していいのやら。
とりあえず入口から二人して離れて、並んで隅の方に体育座りをする。腕を組んで頭を傾けていると、清ちゃんが小さく笑って
「何位とったの」
「私たちは三位」
次いで二位と一位の組名を挙げれば納得したように清ちゃんが頷く。
私たちなど力及ばないどころか、彼らのつま先に触れられるかどうかだと思っているのだろう。私自身もそう思う。
だからといって、負けた理由として数えたくはないが。
「頑張ったつもりだけどね、まだ努力が足りないってことだよねー……。私が足引っ張ってるからさ、練習量増やしたいなーと思ってここに来たんだけど……上手くいくかなぁ」
「は下手じゃない」
「へへっ、ありがと」
「嘘じゃない。のせいじゃない」