第15章 【特別編】甘え日和。
「俺は暇じゃない」
ぐでーっとこちらに体を預けて頭をグリグリと押し付けてくる歩の体を押しのけて、俺は手に持っている漫画のページをめくった。
「漫画読んでるだけじゃんー」
それを暇って言うんだよ、と続けてくる歩を無視してページをめくっていく。
漫画の中では敵と戦う主人公のクライマックスのシーン。
どちらが勝つのかという流れだが、ここで主人公が負けては物語が進まない。
先が見える展開でも読者を物語の中に引き込んでいく作者の描き方に感心していると、手の中にあった漫画がバッと奪われた。
「真澄、俺の話聞いてる?」
「聞いてない。…早く返せ」
むすっとあからさまに不機嫌な表情を見せる歩にため息を一つ。
こうなった歩は自分の意見が通るまで不機嫌なことだろう。
「…何が望みなんだ?」
そう問いかけると、歩の顔がぱっと輝いた。