第13章 【番外編】遠い記憶のその先に。
唇を離すと、そこにはくっきりと紅い花が鮮やかに咲いている。
「痕つけんなよ?!」
「…もうつけちゃった」
えへっと笑う俺を押しのけて、鏡の前に立った真澄はくっきり残った紅い痕を見てため息を吐いた。
「くっそ…こんな見えやすいとこに」
首筋を手のひらで隠した真澄がこちらを睨むが、その表情すら可愛いと思う俺はそろそろ重症だと思う。
引き出しの中から探し出した絆創膏を首筋に貼った真澄は、制服を着ると部屋から出て行ってしまった。
怒らせちゃったかな…。
ふっと息を吐いた俺はギシッとベッドを軋ませてから体を起こす。
足音が遠ざかっていく。
多分真澄はリビングで俺が作った朝食に手をつけている所だろう。
「…はぁ…」
真澄の妹になってしばらくが立った。
母親に写真を見せてもらった時、嘘じゃないかと思った。
実際それは嘘じゃなかったけど。