第11章 honey.11
「おかえり真澄。…温まったみたいだね」
リビングでコーヒーを飲みながら俺の帰りを待っていたと見られる歩がソファーから立ち上がる。
…こいつ。
あの時は動揺と混乱があって気がつかなかったが…。
前よりも痩せた気がする。
そっと歩の頬を指先でそっと撫でた俺の頭に浮かんだのは、生活感のない台所の様子だった。
「…お前、ちゃんと飯食ってたのか?」
俺の言葉には答えずに曖昧に微笑んだ歩は、俺の指先を上から包む様に握るとそれに頬をすり寄せる。
「真澄…あったかい…」
なんでそんなに泣きそうな顔してんだ…。
歩の瞳からは今にも涙が零れそうで…。
「歩……」
「真澄…」
近づいてくる唇を拒むことが出来なかったー…。