第8章 honey.8
「お前はさ、めんどくせえとか思ったことねーの?」
腰辺りに抱きついたまま俺が問うと、彰はこてんと首を傾げた。
「え…何が?」
その仕草と言葉のトーンから本気でそれを言っているのだと感じて、胸の奥がきゅっと狭くなる。
「…“俺”、が…」
「まっすんが…?」
その言葉を口にした時、何故かそれを肯定されてしまえば、俺は酷く傷つくだろうと…どこか冷静に考えていた。
無意識に俺の手は彰の手を掴み、きゅっと指先を絡めた。
そのまま彰の瞳から視線を逸らさずに瞳の奥を見つめる。
「ふはっ。…そんなの思ったことないよ?」
耐えきれなくなった彰が声を漏らし、俺を見つめたままで笑った。
「むしろ俺を頼ってくれて嬉しい」
にこっと笑った彰にざわりと胸の奥がざわつく。
「…お前は、頼られればそれで良いのか?…他の人でも…お前は…」
何言ってんだ俺…。
こんなのまるで……。
「………独占欲……みたいだね」