第8章 honey.8
この状況から見るにと言うか、さっきの顔にあった感触からクロが俺の呼吸を奪っていたことは明らかだ。
まあ、彰がやったんだろうと思うが…。
「クロおはよう…」
「えっ、ちょ、俺はっ?!」
昨日の夜彰と話し合って決めた子猫の名前を呼びながら、その体を持ち上げると彰が過剰に反応する。
そんな彰を無視して子猫の体を抱き寄せる。
暖かな体温が伝わって来るのを感じて俺は目を細めた。
クロは嫌がることなく俺の腕の中に治まっている。
その姿はいつも牙を向いて来る歩とは違い、可愛らしく愛らしいが、どこかつまらない。
胸に広がる微かな苦味を感じつつ、目を閉じ眠りに誘われていた俺の頭を彰がはたく。
「寝ないの。早く朝ごはん食べて学校行くよ」
「ちっ…」