第7章 honey.7
優しく緩んだ彰の目元にしばし見惚れていると、わしゃわしゃと頭をかき混ぜられた。
そのまま何度かぽんぽんと俺の頭を撫でた彰は何も言わずに背中を向けて歩き出す。
冬の空に白く上がっていく息。
彰の背中がだんだんと遠ざかって行く。
「まっすーん、早く来ないと置いていっちゃうよ?」
「すぐ行く!」
止まったままだった足を動かして、俺は彰の背中を追いかける。
駆け足で彰の隣へと並び、再び足を動かし始めた俺たちの長い影が道路に伸びていた。
「そいえば、明日提出の課題があったよね?」
「え、覚えてねえ…」
「まっすんらしいね」
そんな雑談をお互いに交わしながら彰の家へと急ぐ。
冬の冷たい風に誰かのせいで微かに火照った体の熱が奪われる。
これ以上干渉しないで欲しいと思いながらも、どこかでそれを望んでいる自分自身の気持ちに俺は気づいていたー…。
【END】