第7章 honey.7
ガリッ!!!
「っ、!!!」
思いっきり口内にある指先に噛み付くと、歩は顔を歪めてそれを引っこ抜いた。
「げほっ、げほっ…ぅえっ」
口の中にあった異物感が遠のいてむせ返る俺の後ろで、歩は噛み付かれた指先をただ握っていた。
背中を丸めてむせる俺の瞳には涙が溜まり、つぅっと頬を伝って落ちる。
「っはー、はぁー…」
肩を上下に大きく動かし呼吸を整える。
口内にはまだ歩の指の感触が残っていて気持ちが悪い。
歩のものだと思われる鉄の味が微かにする唾液を飲み込んで、はあっと息を付いた俺は手の甲で口を拭った。
背後で歩の気配を感じながら立ち上がり、手短かな物を手にとって手早く用意を済ませる。
こんな空間、早く出ていってしまいたかった。