第4章 honey.4
冷たい風が今の俺にはちょうどいい。
昨日の夕食は食べないままだったため、空腹を通り越してお腹が空いてない腹に、朝食として買ってきたコンビニのパンを詰め込んでいく。
「………」
自分の気持ちがよく分からないって、こういうことなんだろうな。
朝リビングに入ると、テーブルの上には俺の夜食用にとおにぎりが置いてあった。
もちろん手はつけなかった。
許せない…と言うよりもう…。
「どーしたらいーのか、分からないんだよな…」
俺の呟きは風にさらわれる。
ふわりと舞い上がった風からシャンプーの匂いが漂う。
歩の熱に浮かされる。
同じシャンプーを使っているんだから、同じ匂いがするのは当たり前なのに…。
今は冬で寒いはずなのに…。
「熱い…」
俺の肌を辿る歩の指の感触が、やけにはっきりと記憶に残っている。
くしゃっと額に手を当てて、フェンスに背中をこすりながら俺は地面に座り込んだ。