キスしようとするとトリップするのやめてもらえませんか
第1章 はじまり
「おい、跡部ー。
コイツ聞いてないぜ」
「あらあら、天下の跡部様が相手にされんとは中々に曲者やな、このお嬢さん」
「ちっ…」
スタスタスタ…とこちらに向かって跡部様役が近付いてきた。
わー、近くで見たらより一層似ている!美しすぎるっ!
そんな事を考えていると、クイッと指で顎を上に上げられ目の前に跡部様役のドアップ。
『え…』
「お前、俺様の話を聞いていたか?
何処から来やがった、質問に答えろ」
素敵な諏訪部さんvoiceがこんな近くに…
『す…すいません…もぅ…がま…ん出来ないっ…』
「あん?」
『わわわわわっ、な、なんですかっ、このスベスベのお肌はっ!?
手入れは何をっ!?と言うかもう本物の跡部様じゃないですか、素敵過ぎますっ!
その諏訪部さんvoiceはどうやって?!練習の賜物ですか?!
それとも声がやっぱり諏訪部さんに似ているから跡部様役を??
凄いっ、筋肉もっ!鍛えてるんですねっっっ』
「「………。」」
遂に私の我慢の限界が訪れてしまった。
だってあんな近くに美しい顔が来たんだもの、我慢出来ない←
2次元も好きだが、2・5次元も好きな私にとってレイヤーさんや舞台俳優さんも好物なのだ。
とりあえず近くに来て下さった跡部様役の方の身体やら顔やらをペタペタ触ってしまった。
突然の私の奇行に驚いていたのだろうか、大人しく触られてくれた、ありがとう←
『ふぅ…満足しましたっ…。
それにしてもメイクして跡部様の顔に仕上げた割にはそんな濃くないと言うか…ほぼ本物に近い…と言うか…ん…?あれ…??』
自身の言葉で気付いた。
顔を触った時もすべすべでメイクしていた感じもなかったし、腹筋とか身体をペタペタした時、大抵レイヤーさんは男装で跡部様をやる方が多いのに素晴らしい筋肉だった。
そして…
「お前…本物とか諏訪部voiceとか訳わかんねぇ事言って大丈夫かよ。
本物も何も…この俺様が跡部景吾だ」
諏訪部さんvoiceーーーー…
え、待って、この人達、レイヤーさんじゃなくて…え?ほん…もの…??