キスしようとするとトリップするのやめてもらえませんか
第1章 はじまり
『お疲れ様でした』
そう言うと残っている先生方がお疲れ様でした、と返してくれる。
いつもとなんら変わりのない、日常だ。
私の職業は高校の保健室の先生。
共学の為か私が不在の時に勝手にあーんな事やこーーんな事に使用する男女が絶えない保健室の先生だ。
保健室を不純異性行為の場として使うな!って思うよね、うん、私も思う。
だがしかし面子を守る為、そんな事は言わない、優しく『ここではやめてね』って言って叱る。
だからなのか、美人で優しい保健室の女神、なんてあだ名を付けられているが、何気嬉しいので黙認している。
今日もその仕事を終え帰路に着く前に、恒例の本屋に行って新刊を買うのだ。
買う本?えっちな奴じゃないよ、小説でもない。
私が好きなのは漫画だ。
見た目からして「え、漫画なんて読むの?」って思われるが、好きな物は好きなんだもん、仕方ない。
アニメとかもかなり観る。
でもグッツ集めてる訳でもないので多分オタクではない。
ただ色んなストーリーがあって、キャラクターが居て…そんな空想の世界を知るのが好きなのだ。
本屋に着くと、私の愛読している漫画の単行本が色々と出ていた。
心の中でガッツポーズ←
長居は無用なので、新刊数冊手にして会計を済ませてホクホクした気分で家路に着く。
まだ時間は19時過ぎ今日の夜は充実するな、なんて思って携帯を開き信号待ちをしていた。
すると小さな影が私の視界を通り過ぎた。
そう、私の横を通り過ぎた、のだ。
ふとその影を追うように携帯から目を離し前を向く。
「わーっ、待ってよーっ」
そんな声が聞こえた。
私の横を通り過ぎたのは、1人の男の子だった。
何処かデパートで貰ったのか、飛んでいってしまった風船を追いかけているようだ。