第10章 ※雷が結ぶ夜※
(・・・・)
企みが、むくりと鎌をもたげる。頭を撫で続ける手はそのままに、唇の端をほんの少し歪めた。
「さっきの顔と言い・・・、まるで子供だな・・・」
先程、部屋を訪れた時の、青ざめた今にも泣き出しそうな顔。そして今の、必死にすがり付いてくる様。
「子供ではありませんっ。雷が苦手なだけです。本当に怖いんですっ」
揶揄するような口調に、キリカがガバッと顔を上げる。またしても、からかわれた。
必死の抗議も黒死牟には何の効果も成さない。袷を握り締めるキリカの膂力に内心、苦笑する。
(こういう所が・・・、子供だと言うのだ・・・。だが、強がるのも悪くはない・・・)
含み笑いをした黒死牟がキリカに囁きを落とした。
「では・・・、子供ではない事を明かしてもらおうか・・・」
「・・・・?」
薄く開きかけたキリカの唇を塞いだ。舌を潜り込ませ、キリカの舌を捕らえた。
「はぁっ・・・」
長い長い口付けに息が続かず、キリカの頭の芯が痺れてきた。逃れようと唇を離したが、黒死牟は有無を言わさず再び口付けした。
「逃げるな・・・」
キリカの両手首を片手で掴むと、袷に手を掛けた。引きはぐように夜着の前を暴き、乳房を露出させる。
「巌勝様っ・・・」
キリカの首筋に牙を押し当てるように、黒死牟は強く吸い付いた。
「んぁっ・・・」
刺すような刺激に、キリカが顔をしかめる。が、黒死牟は力を緩めない。それどころか更に力を込めた。
濡れた音を立てて、唇が離れた。其処には鮮やかな赤い花が咲いていた。
「此方にも刻んでやろう・・・」
仕上がりを確認すると満足げな笑みを浮かべた。ゾッとする程、凄艶な笑みだった。
反対側にも強く吸い付いた。鮮やかな赤い花が、もう一つ咲く。
「美しい・・・。すべて私のものだ・・・」
キリカを前屈みにさせると、両手を床につかせた。剥き出しになった首筋、肩、背中。唇を押し当て、痕を刻み付けていった。
染み一つない白磁の肌に欲望の印を刻む。それは背徳的な行為に似ていて、黒死牟はもっとキリカを責めたくなる。
「んっ、あっ・・・」
キリカの唇から艶っぽい吐息が漏れた。肌に口付けられ、身体の奥に熱が産まれる。