第7章 ※梅雨籠の睦事※
が、黒死牟はキリカの抵抗を難なく封じた。
「よく見せろ・・・、キリカ・・・」
キリカの右腕を掴むと、己の方に引き寄せた。弾みでキリカの手からワンピースが滑り落ちる。
「だっ、駄目ですっ。見ないでくださいっ・・・」
今にも泣き出しそうな声。なおも弱々しい抵抗を続けようとするキリカの両腕を黒死牟は開くように固定した。
「何故、隠す・・・」
「この前、買っていただいたワンピースを着ようとしていたんです。そうしたら、巌勝様が・・・」
羞恥で顔だけでなく、背中まで熱く火照ってくる。試着してみようとした事を激しく後悔していた。自室とは言え、真っ昼間にこんな姿をしているのだ。呆れられてしまっても仕方がない。
黒死牟はキリカの手首を掴んだまま、固まっていた。何も言わない。沈黙が堪らなく怖かった。
(やっぱり・・・)
呆れてしまっている。そう思ったキリカは、黒死牟の手を振り払おうともがいた。
「離してくださいっ。今すぐ着替えますから」
「その必要はない・・・」
俯くキリカの髪を顎で掻き分け、唇を耳朶に押し付けた。怯むようにキリカが顔を上げれば、嗜虐的な笑みを刻んだ黒死牟と目が合う。
「んっ・・・」
唇を抉じ開け、黒死牟の舌が入り込んできた。息をする暇を与えないほど、深く激しい口付け。手首を掴まれたままのキリカは拒む事も出来ず、ただ受け入れるしか出来ない。
「んっ・・・、はぁっ・・」
貪り尽くすような口付けから、漸く解放される。キリカの身体から、抵抗の意思はすっかり抜け落ちていた。代わりに、情欲に火を灯される。いとも容易く反応してしまうなんて、いつからこんなに淫らな身体になってしまったのだろうか。
「巌勝様、今朝も明け方近くまでしたばかりでは・・」
「おまえがこのような姿をしているから悪いのだ・・・」
黒死牟はキリカの横顔に、ぴったりと己の横顔をくっつけた。キリカが恐る恐る視線を向けると、黒死牟は軽く目を細めた。欲望に濡れた眼差しがキリカを捕らえる。
「それに・・・、おまえも満更ではあるまい・・・。現に今も・・・」
「それはっ・・」
身体に渦巻く情欲を見透かされたようで、何も言い返せない。