第6章 ※夜這い星の褥※
庭先に人の気配を感じ、忍び足で向かえば、そこには黒死牟の姿があった。
構えには一部の隙もない。冴え冴えとした銀の太刀筋に数多の三日月が煌めく。
優雅だが、触れるもの全てを容赦なく切り刻む無慈悲な剣技。
この領域に到達するまで、どれぐらいの研鑽を積んだのだろうか。
キリカはただ見ているしか出来ない自分に歯痒さを覚えた。掛ける言葉も見つからず、黙って見守る事しか出来なかった。黒死牟が褥に戻ってきても寝たふりをしていた。
そんな事が幾晩、続いたのだろうか。
「知っていたのか・・・」
「申し訳ありません。覗き見するようで心苦しかったのですが・・・。巌勝様の後ろ姿がどことなく悲しげで目を離す事が出来ませんでした・・・」
流麗な技を繰り出す黒死牟の表情をうかがい知る事は出来ない。だが、その後ろ姿は人を寄せ付けない気迫と一抹の寂寥感を湛えていた。
「お一人で抱え込まないでください。私は巌勝様の喜びも悲しみも全て分かち合えるようになりたいです」
心も身体もより深い所で強く結ばれたい。それが、キリカの望みだった。
「キリカ・・・」
黒死牟は呻くようにキリカの名を呼んだ。全身が狂おしいまでにキリカを欲していた。
「きゃっ」
キリカの身体を板敷の床に倒した。唇を貪るように重ね、帯をほどくのももどかしく夜着を脱がせた。
「こっ、こんな所でっ」
「たまには・・・、月明かりの下でおまえを愛でるのもよかろう・・・・」
「ですがっ・・・」
「今すぐ・・・、おまえが欲しい・・・」
囁きが、キリカから抵抗の意思を奪っていく。情欲に火を灯す。
いつもより性急で淫らな愛撫がキリカを責め立てた。
下肢を大きく左右に割り開かれた。黒死牟の指がキリカの秘所をなぞる。指はすぐに蜜にまみれ、黒死牟は見せつけるようにキリカの前に翳した。
「これは・・・、何だ・・・」
「・・・っ」
黒死牟が凄艶な笑みを浮かべた。言葉と共にキリカの羞恥を煽る。
「もっと、よくしてやろう」
黒死牟はキリカの下肢の付け根に顔を埋めた。薄い茂みに吐息がかかり、キリカの背筋がゾクゾクと震える。
「んぁっ・・・、そこはっ・・・、だめですっ、あぁっ・・・」