第5章 ※雨の蜜夜 とこしえの契り※
欲望のまま抱いてしまうのは容易いが、何よりも愛おしく、かけがえのない存在であるキリカを傷付けたくなかった。
キリカの身体を抱き抱え、黒死牟が立ち上がる。
幾重にも張り巡らされた几帳をかき分け、部屋の奥の褥に向かう。
一歩、進むごとにキリカの鼓動が激しさを増す。顔は既に薄暗い部屋でも分かる程、赤く染まっていた。
口付けの先の行為。求め合う二人の先に待っているもの。
キリカに経験はない。だが、心と身体が黒死牟を求めて熱くなっていくのを感じる。
褥に下ろされた。背を支えられ、帯を抜き取られた。夜着が、するりと音を立ててキリカの身体から滑り落ちていく。
一糸纏わぬ姿になったキリカは反射的に胸元と股間を隠した。
「何故・・・、隠す・・・」
「私だけ裸なんて恥ずかしいです。黒死牟様も脱いでください」
視線を反らし、消え入りそうな声で訴えるキリカに黒死牟は苦笑し、手早く着物を脱ぎ捨てた。
「・・・・・」
鍛えぬかれた、その肉体にキリカは目を奪われてしまった。如何なる研鑽を重ねれば、これほど素晴らしい肉体になるのだろうか。
黒死牟は髪を束ねていた紐を引き抜いた。漆黒の髪が広がる。
「キリカ・・・、これで良いか・・・」
名を呼ばれ、キリカがはっとした。真摯な眼差しの黒死牟がこちらをじっと見ている。心を射抜かれそうな強い視線に、キリカは吸い寄せられるように見いってしまった。
「隠すな・・・。こんなに美しいのに・・・」
言うや否や、キリカの手を引き剥がし、乳房を露出させる。
「あまり、見ないでください。・・・こういう事は初めてだから、どうしたらいいか分からなくて・・・」
緊張と羞恥のせいか、自然と早口になってしまった。色気がない、と思いつつも止まらない。
「キリカ・・・、私に任せろ・・・」
言い継ごうと開き掛けた唇を黒死牟は己の唇で塞いだ。そして、愛おしそうに乳房を撫で回す。
「あっ・・」
先端の小さな薄桃色の突起を指でいじられたキリカが声を漏らした。
「あぁっ・・」
すっかり固くなった突起に黒死牟の舌が絡み付く。ねっとりと舐められ、キリカに更なる快楽をもたらした。