第5章 ※雨の蜜夜 とこしえの契り※
「構わぬ・・・」
囁きと共に、今度は一層、深く激しい口付けをした。
「んっ・・、これ以上は駄目ですっ・・・」
息が出来ず、キリカの頭がくらくらしてきた。心と身体が内側から熱くなっていくのを感じ、キリカは困惑していた。
「黒死牟・・様・・」
力が抜け、膝から崩れ落ちそうになる。黒死牟にもたれ掛かり、何とか堪えた。
「キリカ・・・」
やり過ぎたか、と黒死牟は慌ててキリカを解放した。ようやく解放されたキリカは、潤んだ目で黒死牟を見つめている。
どうして、こんなにも愛おしいのだろうか。
黒死牟もキリカを見つめていた。目の前の少女が愛しくて、時折、己に歯止めが利かなくなりそうになる。それが怖かった。
「申し訳ありませんっ。もう行きます。夕刻までには戻りますから・・・」
「分かった・・・。引き留めるような真似をして悪かった・・・」
「いいえ、気にしないでください・・。では、行って参ります・・・」
名残惜しさをふりきるように、キリカは早足で出ていこうとした。
「キリカ・・・」
廊下を半ばぐらいまで進んだ所で黒死牟に呼び止められた。振り返り、続く言葉を待つ。
「気を付けて行ってくるのだぞ・・・。もし、何かあったら私を呼べ・・・」
「ありがとうございます。行って参ります」
明るく微笑んだキリカは手を振ると、玄関に向かって歩き出した。
(杞憂で済めばよいが・・・)
顔を曇らせたまま、キリカの後ろ姿を見送った。何事も起こらぬよう、それだけを祈りながら。
「黒死牟様ったら・・・・」
昨夜、黒死牟と心を通わせあったばかりだ。何かが変わったような、変わらないような、不思議な気分だった。
もっと好きになりたい。もっと好きになってほしい。もっと求めてほしい。
「・・・・っ」
求められた先の行為を想像し、キリカの鼓動が一気に跳ね上がった。歩みを止め、立ち尽くしてしまう。
(朝から、こんな事を考えてはいけないわ・・。それより早く行かないと遅くなってしまう)
とんでもなく、はしたない想像にキリカは赤面しながらも歩みを速めた。