第13章 ※宵の宮・雨月夜の契り※
「・・・っ」
黒死牟が息を詰めた。きつく絡みついてくる、花弁の感触。蕩けるように熱い。堪らず、腰を叩き付けるように突き入れては最奥まで抉り、やがて自身も果てた。
「巌勝様・・・」
大量の精が注がれていく。胎内の奥深くで黒死牟の鼓動を感じながら、キリカは切なげな吐息を漏らした。
快楽の残滓に身を任せながら、二人は固く抱き合っていた。さすがに疲れ果てたのか、キリカの意識は夢と現の境目を漂っていた。
外の雨足は少しも衰えていない。これでは当分、外に出れそうにない。しばらく逗留するのも悪くはないだろう。
艶やかなキリカの髪を指に絡めながら、黒死牟は考えを巡らせていた。
「・・・?、如何した・・・」
腕の中のキリカが不意にもぞもぞと動いた。抱く腕の力を少し緩めると、覗き込むようにして尋ねた。
「あ、いえ・・・、何でもありません」
誤魔化すように小声で呟くと、それきり、キリカは視線を反らしてしまった。
「キリカ・・・?」
何か隠しているような素振りのキリカに黒死牟は首を傾げた。再び問い掛けようと、口を開き掛けると。
微かな腹の音が聞こえた。
「・・・・」
無言のまま、キリカが身体を捩らせた。必死に誤魔化そうとしているが無情にも腹の音は鳴り続けている。
「キリカ・・・」
「・・・・」
「腹が空いたのか・・・」
「・・・申し訳ありませんっ」
止まらぬ腹の音に、キリカは頬を真っ赤に染めていた。今日は祭りに行く支度に必死で、昼過ぎから何も食事をとっていなかったのだ。