第2章 【リドル】It's tea time②
リドルとのティータイムが楽しすぎて、いつの間にか予定の時間をだいぶ過ぎてしまっていた。
他の仕事も終えて学園長の元へ戻った時には、既に外は暗くなり、校舎に残る生徒もほとんどいない状態だ。
挙句の果てに、時間がかかりすぎた事を学園長に注意されてしまう始末。
御茶の時間はとても楽しかったのに、気分が台無しになってしまった。
まぁ、自業自得でもあるのだが……。
「雨も降りそうですし、気を付けて帰ってくださいね」
最後の最後に学園長は優しい言葉を掛けてくるから憎めない。
サユは急ぎぎみにオンボロ寮への帰り道を一人で歩いた。
魔法が使えたら、寮までの道のりもひとっ跳びなんだろうな……魔法の鏡も私ひとりじゃ不安で使えないし……そんな事を考えながら歩いていると、学園長の言った通り、ポツリポツリと雨粒が頬に落ちてくる。
「……最悪」
寮までの道を駆け始めるが、あっという間に雨足は強くなりびしょ濡れの自分に半ば諦めを覚えた時、スッと背後から傘が差し出された。
思わず足を止めたサユは傘の持ち主の方へと顔を向ける。
「リドル先輩……」
「少し前にケイトから、サユがまだ校内にいたと聞いて、学内とは言え夜道は危険だ」
「ありがとうございます」
「それに、雨も降りそうだったしね。濡れてしまったようだが追いついてよかった」
サユは、リドルと肩を並べて一つの傘に入ると、寮までの道を歩いた。
学年も違うし、一緒に帰ることなんてめったにない事でとても嬉しく、この時間がいつまでも続けばいいのにと思っても、それはあっという間に終わりを告げてくる。
ハーツラビュル寮とは雲泥の差のボロボロの自分の寮にたどり着き、丁寧に頭を下げたサユ。
そこで別れるものだと思っていたのに、リドルは何食わぬ顔で寮の中まで付いてきた。
不思議そうな顔で彼を見上げるサユの額にリドルは優しくキスをする。
「こんな雨の中、君は僕を追い出したりしないだろう?」
「えっ?はい……でも」
ハートの女王の法律に外泊や脱走のルールはないのだろうか?と……。