第10章 【レオナ】午後の幸せ
この時期の植物園は、とても居心地が良い。
いつでもて気温が施されている植物園ではあるが、入り込む日差しや季節の香りは周りのそれに影響を受けやすく、1年を通してみればより良い季節というものは存在するものだ。
サバナクロ―寮の寮長でもあるレオナ・キングスカラーは本日もお気に入りの場所で惰眠を貪っていたが、昼休みになり、少しばかり周辺の音が騒がしくなる頃、微睡の中に優しい音が混じった事に気が付いた。
そっと薄目を開けてみれば案の定、恋人であるサユが自分の傍まで寄ってくるのが見える。
眠りを続けようと目を閉じて、サユの香りを感じながらゆっくりと呼吸を繰り返せば、しゃがみこんだ彼女が自分の顔を覗き込んでいる気配を感じた。
サユは熟睡しきっているであろうレオナの寝顔に小さなため息を吐くと、その隣に腰を下ろす。
持参した本を開いて文字に目を走らせ始めると、そろりと動いた大きな体が自分の方に向けられ、伸びてきた手に抱き寄せられた。
腰に巻き付いてきた手は温かく腰元に当たる彼の吐息が少しだけくすぐったさを覚える。
「レオナ先輩?」
「……」
「狸寝入りですか?」
「狸じゃねぇな」
そんな答えにクスッと笑ったサユは、腰元に寄せられているレオナの頭にそっと手を乗せてゆっくりとそれを撫でた。グルグルと鳴るレオナの喉元を見下ろし、こんな彼が見られるのは自分だけの特権だろうと嬉しくなって、更に笑みを零す。
「お昼食べました?」
「まだだな」
「ラギー先輩は?」
そう問いかけるとほぼ同時くらいに、軽やかな足取りでやってきたラギーが昼食の入っているであろう紙袋を抱えている姿が目に入った。