第1章 【リドル】It's tea time①
「仲がいいのは良い事だが、リドル……サユさんをそろそろ解放してあげた方がいい」
「お前には関係ないだろう」
「サユさんが、ゆでだこになってしまうぞ?」
恋人同士だと認識されている事は分かっているが、さすがにイチャイチャしている姿を見られるのは恥ずかしい。
サユがリドルの腕の中で、小さくなっているのが手に取るように分かる。
「タコ?……アズールに誑かされたのか?」
「なぜ、そこでアズールが出てくるんだ」
「タコと言えば、海、オクタヴィネルだろう」
トレイが小さなため息をついたのを見て、今度はサユがクスッと笑った。
サユの髪からリドルの手が離れ、やっと解放される。
綺麗に並べられたアフタヌーンティーのセットに目を輝かせて、サユはお決まりの席に腰を掛けた。
今日のスイーツも手が込んだものが並んでいておいしそうだ。3段のアフタヌーンティースタンドには、ミニサンドウィッチからフルーツゼリーまで色とりどりのおやつが並ぶ。
そして、赤いハートが散りばめられたティーカップに注がれたのは、ゆったりとした湯気が立つミルクティー。
……レモンティーではない。
後から歩いてきたリドルが、サユの前に座って自分の分のミルクティーに角砂糖を1つ入れた。
「今は食後の紅茶の時間ではないし、君はこの寮の寮生ではない」
「昨日届いたばかりの茶葉で入れたミルクティーは絶品だよ」
リドルとトレイの顔を順に見て、サユも角砂糖を1つ取る。
「僕もミルクティーは大好きだ」
溶けた角砂糖が甘い時間を更に甘くした気がして、再び頬を赤く染めるサユ。
「じゃあ、ごゆっくり」
仕度を終えたトレイも一緒にお茶をするのかと思っていたが、どうやら2人きりにしてくれるらしい。
サユは仕事の時間も忘れて、美味しい紅茶と甘いお菓子で楽しいアフタヌーンティーの時間を過ごしたのだった。