第9章 【フロイド】over over！！

朝の風景……鏡舎を出て、フロイドは一緒に来ていたジェイドとアズールと一旦分かれる。
「じゃ～ね～」
手を振るフロイドはここの所、毎日機嫌が良い。
悪くはない兆候である。ジェイドもアズールも彼に手を振り先に校舎へと向かった。
「監督生さんの存在が彼をあそこまで変えるとは思っていませんでしたね」
「えぇ、まぁ根本は変わらないにしても大切なものが増えるという事は良い事ですから」
ジェイドとアズールはそんな話をしながら歩く。一方フロイドは、つい最近手に入れた彼女……監督生のサユをオンボロ寮へ迎えに行くのが日課となっていた。
「小エビちゃ～ん」
大きな声で彼女を呼びながら、自分の身長よりもだいぶ低い柵を飛び越えて寮の玄関先へ向かう。
間もなく玄関へたどり着くタイミングで制服姿のサユがギギッと怪しい音を立てる玄関ドアを開けて外へ出て来た。
フロイドがすかさず彼女をハグしてやれば、その身体はすっぽり彼に包まれてしまう。
「おはようございます。フロイド先輩」
「うん、おはよ～」
朝の抱擁が終わると、二人並んで校舎へ向かった。
フロイドの大きな手がサユの手と絡まりお互いの体温が行き来する。他人よりは体温が低めだけれど、決して冷たいわけではなく、大きくて男らしいその手がサユは大好きだった。