第5章 【エース】Flour of heart①
昼休みを告げるベルが鳴る。
大きく伸びをしたエースは、教科書を片づけるとすぐさまサユの所へ向かって行き、食堂へと誘った。
「サユ、今日の放課後…暇か?」
「バイトだけど……」
エースはサユの答えにまたかとため息を吐く。
異世界からやってきてしまったサユは、一文無しでオンボロ寮に置いてもらう代わりに学園長のお手伝いから庭の草むしりまで色々とこなしてマドルを得ていた。
給料は学園長から貰えるらしく、アルバイトとしてそれを生業としている。
「お前、いつバイト休みなの?」
「休みはないね。基本的に」
そんな会話をしながら、デュースやグリムと一緒に食堂へ向かいつつエースはどうにかならないものかと腕組みをし思案した。
サユとデートがしたい!
リドルの暴走事件のあと、いい感じになったエースとサユは、ケイトの後押しもあって晴れて恋人同士となったのだが、学業も忙しいし、サユはアルバイトがあってなかなか2人きりで過ごす事ができないでいた。
エースのもやもやも随分と貯まってきているのだが、生憎、魔法レベルはまだそれほど高くないため、何かあってもオーバーブロットを起こしてしまう心配はないようだ。
先に列に並んだデュース達を見て、エースはサユの肩をチョンチョンと叩いて少し列から離れる。
「なぁ、俺、デートしたい」
エースからの率直な申し出に、サユは顔を真っ赤にして、辺りを急いで見回した。
嬉しいやら恥ずかしいやら、他人に聞かれたらと思うと気が気ではない。
付き合っていることがばれたくないとか、そういう事ではないのだが、やはり年頃の女の子である……少しばかり恥ずかしいのだ。