第1章 プロローグ
歩き始めて少し経ったが、一向に景色も状況も何も変わらないまま時が過ぎていく。
(てか、本当にここは何処なんだろう・・・いつもどーりに自転車をとばして学校に向かってたんだけどなぁー)
ーザッザッザッザッー
宛がある訳でもないが、ただただ歩き続ける涼香。
考えを巡らせていたその時ー
「っぁ・・・・ぃっ」
小さく呻くような声が聞こえ、立ち止まる。
(人の声・・・?いや、こんな森の中だから動物の可能性もあるか?もし動物だったら森なんだから熊とかじゃ・・)
少し青ざめた顔で辺りを見回してみる。すると、視界の端に捉えたのは・・・
ー白銀の髪を所々赤く染め、ボロボロの着物を身にまとい、木に身体を預けるようにぐったりとした様子のー
(ひ、と・・・?というかっ!!)
考えるより先に涼香はその人へと走りよった。
「大丈夫ですか?!息、はしてる・・・!どどうしよう・・?!」
何をすればいいのか分からないが、とりあえず雨の当たらない所へと運ぼうとその人へ触れたその時、
「・・まぅな」
「・・・え??」
意識がないと思っていたその人が、振り絞るように言う
「か、まうな・・・され・・・っ」
「っ!!」
息するのもやっとなくらいに弱っているのに、切れ長の目でこちらを睨みつけるその迫力が涼香に恐ろしいくらいに伝わってくる。
ザッー
思わず1歩引いてしまった。が、
(こ、わい・・・けど、こんな・・.!)
ザッ!!ー
決心するように強く1歩をその人へ踏み出す。
そしてー
「かまうなも、去れもできません・・・!」
そう言って、その人の手を握る
「!!っな、にを」
「とゆうか、去れと言われても私、行く宛てもないので・・・それに!私、倒れてる人を見捨てるような、そんな酷いこともしませんよ・・・」
「・・・そうか」
「そうです!・・・とりあえず、雨の当たらない所へ移動しましょう?さすがに背負えないので、肩をお貸しします」
その人が立ち上がりやすいように少しかがむ。すると、
「・・っ!」
蜂蜜色の、綺麗で何処か危うさを漂わせる目と初めて、視線が交わった。