第25章 我、道を行く(ヘタリア)
夜の街、カマクランシティ。
ここは朝が来るのはたったの2時間だけ。文字通りの夜の街。
太陽を拝めるのがほとんどないこの街は、夜は氷点下30度を下回る。
そのため、巨大なカマクラの中に街がある。よって、この街はカマクランシティという。
そこまでが王耀が読む旅のしおりの説明である。
「一般的な説明しか載ってないある。こんなのネットで調べればいくらでも出るある」
王耀が知りたいのはこんな簡単な街の説明ではない。
もっと裏社会について…
『惑星C~…惑星C』
やる気のない構内放送が宇宙鉄道に響き渡る。
「あ、降りるある!」
王耀はブザーを何度も押し、広げた荷物を手早くまとめて飛び降りた。
「うー寒いあるるるるる」
鼻を啜ろうと息を吸い込んだが、鼻水も凍ってしまってそれができなかった。
「な、なんあるか!街の中に駅ぐらい作ればいいね!旅人に親切じゃないところあるなー」
まだ日暮れ前を選んで着くようにしたが、辺りにはすでに身を裂くような寒さが広がっていた。
(老体には響く…)
そんなことを考えながら視線をずらすとそこには巨大なカマクラがいくつもあった。
外からでも虹色に輝くそのカマクラに、不気味ささえ覚えた。
(ここに…帳の王がいるあるか…)
王耀は息を飲んで街全体を見まわした。
「う!寒いある!感慨に浸っている暇はないある!!」
早々にカマクラの中へと入って行った。
「はぁい、おねえさん」
街に入ると、そのすべては繁華街のようになっていた。
むせ返るような香水の香りを漂わせた綺麗な顔の男が、王耀に声をかけてきた。