第16章 おそろいのティーカップ(ヘタリア・アーサー)
「それ、欲しいのか?」
俺は彼女に聞いた。
「え?どうして」
「いや、その同じ物ばっかり見てるから」
彼女が見てるのはティーカップ。
「欲しいなら、買うぞ」
そう言って手に取ろうとすると、
「あ、駄目…!」
俺の手からそのティーカップを奪った。
「あ、あたしがアーサーに買いたいの。
ほら、ずっと同じの使ってるから、茶渋が付いてきちゃったでしょ?
たまにはあたしがアーサーに何かあげたいの」
いつももらってばっかりだから、と彼女。
そんなこと気にしなくてもいいのに、と思ったが俺は「ありがとう」と言った。
「あのティーカップがお気に入りっぽいから、少し似てる感じのが欲しいなと思って」
「そっか」
特に気に入っていたわけではなかった。
いつから使っているのかさえ覚えていなかったが、気が付いたらそればっかり使っていた。
買い物後、しばらくしてからそう言ったら、
「それがお気に入りって言うのか分からないけど、いつも使ってるならお気に入りでいいんじゃないかな」
と、彼女は笑っていた。
彼女は2つ色違いでそのティーカップを買った。
「今日からおそろいだね」
棚にそれを並べて、彼女はうれしそうに笑う。
俺もうれしくなって、彼女の頭に頬を寄せる。
「あれ?そう言えば何買いに行ったんだった?」
「あ、いけない!茶葉忘れた!」
ティーカップを使う機会は、しばらくなさそうだ。