第1章 不協和音さ(お相手:山崎)
あいをうたう
うつくしい歌詞
「たのしそうじゃないですね」
数合わせの合コン。
加えて三徹目の夜勤後のカラオケ。
俺のテンションはだだ下がりだったわけだ。
そんな俺と似たようなテンションの女の子がいた。
確か名前は五十鈴さん、だったかな。
ハッキリ言って、意識が朦朧としてるせいもあるんだけど、女の子の名前とかうろ覚えだった。
「えっと…」
いつものことだけど、彼女も俺の名前を覚えていないみたいだった。…まあ、いつものことだけど。
「山崎です」
「山崎さん。すみません…
はっきり言う方ですね」
彼女は少し苦笑いを浮かべながら軽くマラカスを鳴らしていた。
ちょうど局長の山場が来ていた。
ノリノリの局長、途中参加の沖田隊長に群がる肉食女子たち。
いつ見ても心の痛い構図だった。
「まあ…
あ、なんかすみません。批判したくて言ったんじゃなかったんですけど。
俺も今、たぶん五十鈴さんと同じ状態だなって…思っちゃったもんで」
局長の盛り上がりようをぼんやり見ながらそう言うと、彼女は少しほっとしたように笑って、
「山崎さんみたいな方がいてよかったです…」
と言った。
不覚にも、ちょっとドキドキしてしまった。
「合コンって、苦手なんです。
知らない人とお酒を飲むって、緊張するだけじゃないんでしょうか…
楽しいですか?」
「うーん。
俺もあんまり得意じゃないけど。知人って野郎しかいないから、たまには女の子と飲みたいこともあるかな~」
彼女いないし、と小さい声でちょっとアピールしてみた。
そうですよね…、と彼女は寂しそうに笑った。最後の部分聴いててくれたかな?
「女性は、やっぱりぜんぜんいないお仕事なんですね」
「あ~…うん。女人禁制なんだ、うち」
「あ!そうですよね、たしかに…真撰組でしたよね…」
そんな会話をしていると、大胆な女の子が沖田隊長の腰に腕を回していた。
びっくりしてジンジャーエールを吐きそうになった。
やっぱモテる男って、何もしなくてもこんななんだなってすっげー驚いた。
五十鈴さんと会話をしながら、俺は沖田隊長と肉食系女子との駆け引きがめちゃくちゃ気になってた。