【読切短編】ルール ルーム 〜◯◯しないと出られません!〜
第1章 リーチ兄弟といっしょ
「まぁ…それも一理ありますかね」
一理どころではない。全理だ。
「…てか…ジェイドォ。
オレ、ジェイドにもちよっと言いたい事あんだけど〜」
「奇遇ですねぇフロイド。僕も貴方に言いたい事があります」
……おっと、急に兄弟間の雲行きが怪しくなったぞ。
「あれだけ抜け駆けは無しって約束したのに!あっさり破ってんなよなぁ!」
「それはこちらの台詞です。やはり貴方は堪え性が無いんですね」
「どの口が言ってんのぉ?」アァ!?
ま、まずい。
にこにこと笑いながら毒を吐くジェイドと、牙を剥いて怒りを露わにするフロイド。
『は、早く帰りま』
「だいたい貴方の方から、互いに抜け駆けはしないとの提案を持ち掛けておいて…先に裏切るとはどういう了見ですか」
「なーんでオレの方が先に破ったって分かるわけぇ?」馬鹿なの?
「だいたい貴方は、想いも告げずに口付けをしているのですか?そのような不義理を働くような兄弟は持った覚えありませんね」
「うっせうっせぇー!」
あぁ、私の声などもう2人に届きはしないのだろうか。
私は一刻も早く、この恐ろしい空間から 3人一緒に出たいのである。
もうこうなったら、半ばヤケクソで 私は呟く。
『あ、あの…この部屋から先に出た方と、デートがしたいかもしれないなぁ!』多分
ぐるんっ、と2人の首が回ってこちらを向く。思わず私は駆け出した。
『っひゃ』
ジェイドとフロイドの2人が、ぐんぐん距離を詰めてくる。
するとあっという間に私など抜き去り、2人は先に出口付近に到着する。
もはやどちらが先に部屋を出たのかなどは、どうでもいい。
今は、置いていかれる事の方が恐怖だ。こんな訳の分からないところに1人は嫌だ!
『ま、待っ』
私は涙目になりながら、2人に向かって手を伸ばして走る。
すると彼等は、わざわざまた部屋の中に足を踏み入れた。
そして、私の方へ その両手を差し出した。心の底から楽しそうな笑顔を浮かべて。
フロイドとジェイドの、満足そうな顔に若干の悔しさを覚えながらも
私は彼等の手を、取るのであった。
Click here for the exit !