第2章 宵の雨
「ただいまー」
が店の扉を開けると、アキオはカウンターから立ち上がった。
「おう、おかえり。久しぶりさなぁ。さっき坊にあわんかったか?」
「カカシさん?うん、会ったよ。マスクの人だよね?」
アキオが『坊』と呼ぶのは木の葉でたった1人。
可愛がっていたカカシだ。もすぐにピンときた。
「やっぱり会ったか。さっき話し声が聞こえたもんでよ。もしかしてと思ってな。」
「あぁーうん。初めて話したんだけど、優しそうな人だった。」
「そうか!アイツが優しそうか!まぁそうだな」
とアキオは楽しそうに笑っての手荷物を受け取りカウンターの横に置いた。
「随分重てぇもん持って帰ってきたなぁ。」
「あっそうだ!おじいちゃん、風の国で珍しいもの見つけたよ。珈琲っていう飲み物なんだけど、ちょっと苦いけど美味しいの。」
は荷物からいそいそと袋に入った茶色い粉を取り出した。
「どうやって飲むんだい?」
「そこのね、荷物に入ってる機械に入れて飲むの。ちょっと待っててね。」
手際よく機械をとりだし、カウンターのレジ横に置きにいつもお茶を入れる為のヤカンで湯を沸かした。
「サイフォンっていうんだよ。ここのフラスコに1回湯を通して…」
はその風の国で教わったのだろう、小さなメモを見ながら準備をしていく。
珈琲の独特な匂いが鼻腔をくすぐり始めた。
ほんわりと立つ湯気と香りが空間を温かく包み込んでいく。
「嗅いだことねぇが…いい匂いだな」
「でしょ。お砂糖とミルク入れても美味しんだよ。おじいちゃんのは入れとくね。」
客用のマグカップを棚から2つ取り出して、店の入口近くのテーブルの上に置いた。
この船瀬屋は、本屋だけでなく夜に帰ってきた忍や何かを抱えて家に帰りたくない人の憩いの場所として作ったカフェスペースが1つあるのだ。
アキオとは向かい合って座り、ずずっと啜る。
「うめぇな。」
「でしょ」
ふふふっとは少し誇らしそうに笑った。
「これをね、夜のお客さんに出せたらどうかなぁと思って。」
「いいんじゃねぇか?どの道この店もお前のもんになる。好きにすりゃあいい。」
「ありがとう。…ねぇおじいちゃん、お父さんはまだ…」