第1章 はじめましてのひ
彼女を初めて見たのは甘栗甘。
雨の日にたまたま目の前を通ったらとっても幸せそうに誰もほかに居ない店内からじっと外を見ていた。
変わった子もいるもんだなと、それだけの感想しか持たなかった。
その次に雨が降った日、また偶然入った食堂でアスマと飯を食べようと入ると彼女が窓の近くの席からじっと外を見ていた。
その日もとても幸せそうだった。
少し長く見すぎて居たのだろう。前に座っていたアスマに不審な目で見られていた。
何かを食べながら雨を眺めている日が多いようだ。
変わった人だなと思ったが、甘栗甘で見かけた子だと気がついたのは店を出た後だった。
「あっ!あの子か!」
「なぁ、お前どうしたんだ今日は変だぞ。」
「アスマ程じゃないヨ。紅にお熱のくせに」
「通算125回めだよ。お前をぶっ飛ばしたいと思った。」
「なに?手伝って欲しくないの?」
「すみません手伝って下さい。」
その後も雨の日はよく見かけた。
雨に濡れないように野良猫と雨宿りをしているところや、誰かと話してるところ。どこかの店から見ているところ。
何時だって彼女は嬉しそうだった。
いつしか雨の日の名物のように思うようになり、姿を探す癖が着いたがぱったりと見なくなったのは2年ほど前から。
今思えば、彼女は恐らくその時期から本の仕入れとかで国の外に出ることがあったのだろう。
本当に雨の日によく会うなと緩んだ頬のまま家に着いた。