第1章 はじめましてのひ
point of view::::kakashi
「そういやぁよ、坊。俺の孫が帰ってくるんだ。」
奥行のありすぎる洞窟のような不思議な本屋。
入口から3メートル離れたカウンター越しにアキオさんが言った。前の任務で気になった事があり、本を探しに来てしばらく放置されたかと思えばいきなりそんなことを言う。
「良かったですね。ずっと待ってたじゃないですか。」
「まぁね。本の仕入れをしてくれるのはありがたいんだが、俺ももう歳だからねぇ。まだ正式には少し先だがあの子に代替わりしてからでも贔屓にしてくれよ。」
「もちろんですよ。というか…忍は専らコッチでしょ。」
里にはもう1つ舟木屋という本屋があるが、そっちは大衆向けでこっちはコアな専門書ばかりを置いている。
売れているのかどうかも謎だし忍が…とは言ってもそんなに客を見かけたことは無い。
「まぁね。違ぇねぇ。」
目当ての本が見つかり、金を払った。
窓の外からはパラパラと雨が降っている。
「坊、雨降ってるから気ぃつけろよ。」
コピー忍者といわれ他国にまでそこそこ有名な自分にかける言葉ではないなと思いつつも嬉しくなる。昔からこうなのだ。父の代から世話になっていたせいか、この人の頭の中では最初出会った頃の子供のままなのだろう。
「はは…言われなくても。」
店を出ると傘を指した女性が1人立っていた。どこかで見た顔だ。はてどこだったか…と思いをめぐらして見るとその眼差しを見て思い出した。以前よりも少し大人びたから分からなかった。
「君は…」
「初めまして。いつもご贔屓にありがとうございます。」
「あぁ、君ここのお孫さんだったの。」
「えぇ、カカシさんですよね?昔から良くしてくださってると祖父からよく話は聞いてるんですが、お会いしたことがないのが不思議な感じです。」
「そうだね。というか俺の方こそお世話になってるんだけれど。」
ま、俺は初めてでは無いんだけれど挨拶するのは初めてかな。という言葉は言わない。言う必要も無い。
「またのご来店お待ちしておりますね。」
「うん、また来るよ。」
にっこりと笑った彼女につられて俺もつい笑ってしまう。
じゃあ、と別れ家に着くまでの道すがら彼女を初めて見かけた時の事を思い出していた。