第7章 雨やまぬ軒の玉水
ナルトはイライラしていた。
いつもこの先生は、やれ『人生の道に迷った』だの『黒猫が目の前を横切った』だの言ってのらりくらりと遅れてくる。
その上今度は任務で里外から帰る途中の町で雑貨屋の店主と話し込んでいる。
「ねぇ、ナルト。カカシ先生怪しくない?」
同じく待っていたサクラがナルトにコソコソと耳元で言った。
「おかしいって、なにがだってばよ?」
「もう!アンタ本当に鈍いわね!カカシ先生の手を見てみなさいよ!」
ナルトがカカシの手元に視線を向けると、女性物の青色の耳飾りを持っている。
カカシはどうやらそれを買うことにしたらしかった。
「あれは絶対女よ!」
断言するサクラにナルトもゴクリと喉を鳴らす。人の重大な秘密を覗いた気になり、力が入る。
「サクラちゃん」
「ええ、つけましょう。」
相手はどんな女だろうか?
以前第7班の3人でカカシのマスクの下を拝もうと後をつけ試行錯誤していた事を2人は思い出していた。
少し機嫌が良さそうにこちらに戻ってきたカカシを、訝しげな怪しい目で凝視したナルトの腹にサクラが強烈な一撃を叩き込んだ。
「えっ?なに?どうしたのお前ら。」
「なっ、なんでもないんですぅ〜あはは〜」
地面に蹲る前のナルトを引き上げて白目を向いてても元気だとサクラは強引に誤魔化した。
様子がおかしいとは思ったがこの2人ならいつもの事かと、カカシはそれ以上に追求しなかった。
大方ナルトがサクラの逆鱗に触れるようなことでもしたのだろうと。
まさか2人が自分をターゲットにしているとはこの時のカカシは思っていない。
帰りの道を辿る途中、抱えるのが重たくなったサクラは途中でナルトを道に置いたが
その後復活してなんとか追いついてきていた。
里に着くと、瞬身の術で消えようとするカカシを間一髪捕まえた。
「本当なんなの?そんなに俺のことが好きなの?」
「そ、そうだってばよ!オレってば、まだカカシ先生と一緒にいたいなぁ〜なんて」
「ナルトの言う通りですよ!カカシ先生にいてもらわないと!」