第5章 流星雨
世界を覆い尽くす紺青のカーテン。
天鵞絨(びろおど)の生地に、色とりどりの宝石を縫い付けて様々な動物と人を連想させる星辰の刺繍。
このカーテンが開く時には眩しい朝日が照らすのだろう。
はこの世で1番豪華で贅沢な舞台を見ているようだった。
横目でカカシを見ると、本当に星空に注意を向けることがないのだろう。
真剣に一つ一つの光を捉えるかのように瞳に納めていた。
その時、凄まじい音と光が当たりを照らした。
カカシは反射的に素早く立ち上がり臨戦態勢をとってを後ろに庇う。
真昼のように光ったソレは、空に直線を引き瞬く間に消える。
「これは…」
息つく間にまた火球が宙を駆け抜けた。
次に次にと光が照らしまるで雨のように夜空に降り注ぐ。
『流星雨…』
「流星雨?」
敵からの攻撃ではないらしいとクナイを収めたカカシが聞き返す。
『流れ星が雨みたいに降り注ぐ現象らしいんですけど、こんなの数百年にあるかないかって本で読みました…』
呆然と目を点にして光の玉に釘付けになる。
あっちにもこっちにも、次々と天からの祝福を捧げるような星屑達が最後の光を放ち消えていく。
普段見る流れ星の数など比では無い。
流星雨の名に相応しい天の河を跨ぐ光の雨だ。
いくつ見えただろうか。あまりの数に圧倒されて、願いなどを唱える事すら出来なかった。
幻のような、夢のようなぼんやりとした浮遊感の中、カカシとは互いに顔を見合せた。
驚いた表情をしてる自分たちがなんだか滑稽で笑えてくる。
後ろに庇っていたはずのはいつの間にかカカシの前にいた。
ひとしきり笑った後、瞳に星を映したの髪が風で揺れる。
興奮の熱で燃え上がった瞳に、好調した頬。
カカシの血と心臓が沸き立つ。
絶景と呼ぶべき景色に佇むが、カカシに微笑んだ。
カカシの鼓膜を擽る振動。
恋に落ちる音がした。