第2章 ヒーロー嫌いの女の子
春
「糸仲 充希と言います
個性は念力で、紐を操る力です
これから1年間よろしくお願いします」
パチパチパチ
自己紹介をした後、クラスから拍手を送られる
しばらくして拍手は止み、また次の生徒に変わる
それを、窓の外を見ながら聞く
「(なんで雄英に来ちゃったんだろ…)」
この高校に来たことを本当に悔いる
元々ここに来たのは彼女の意思ではない
『おい充希、お前雄英に来い』
『はい?』
唐突に
本当に突然に、そう言われた
しかも雄英高校ヒーロー科教師 相澤 消太
プロヒーロー、イレイザーヘッドとして活躍する御方にだ
『だから、雄英に入れって言ってんだよ』
『いやいや、あの自分が何言ってるか分かってます?
私の個性使い物にならないんですよ?精々服の繊維引っ張るだけですよ?
そんなんで雄英に入れると思いますか?』
『まあまあ落ち着けよ
相変わらずキツいこと言うな』
『全裸にしてやりますよ?』
『やめろ』
『チッ』
『……………まあこれは冗談じゃない
ヒーロー科じゃなくて、普通科に来いと言ってるんだ』
今までのおふざけな会話から一変して、相澤先生は真面目に話してきた
どういう魂胆なのかが分からない
相澤先生は私の個性を知っているはずだ
すると、相澤先生は心を読んだかのように言う
『お前の個性はヒーロー科に持ってこいのものだ
だがまあ、お前が嫌だっていうなら無理強いはしない
本人の意思でヒーロー科に入れるかどうかが決まるからな
けど、まだお前の保護観察は続いてるんだ』
『その保護観察っていう名の監視を続けるために、雄英に入れというわけですか』
『そうだ』
『…………私がヒーローになりたくないのは知ってますよね?』
『もちろん分かってる、だが事が重要なんだ』
『……………』
『なんせお前は8年前、自分の父親が起こした一家惨殺事件の唯一の生き残りなんだからな』
静かにそう告げられる
そしてそれは間違っていない
『……分かりましたよ、雄英に行きます』