Sogni d'oro/GIOGIO Parte5
第2章 シーグラス/ブチャラティ
「ハァ……」
周囲に聞こえそうなくらいの大きなため息をつくのはこれで何度目だろうか……
アジトにしているリストランテの片隅──
頬杖をつきながら窓の方に顔を向け、1人たたずんでいるのはナマエだ。
いつからそこにいたのか……
テーブルには冷めきってしまったエスプレッソが無造作に置かれている。手にしているのはスマホ……目線を向けたかと思うと、画面を伏せて肩を落とす。
そこへ外に出ていたブチャラティが戻ってきた。
不意に店内を見渡すと、今日は非番の彼女の姿が目に留まる。憂いを帯びたその表情からは、“何かあった”ことは明白だ……と、言うのも、このような姿を見るのはこれが初めてではなかった。
また“アイツ”と何かあったな──
そう悟ったブチャラティが、ナマエの元へとゆっくり歩み寄る。
「どうした、こんなところで……? 今日は、ミスタとデートじゃあなかったのか?」
問いかけると、ナマエは無言のままチラリとこちらに顔を向け、『……ドタキャンされた』と、ポツリと呟く。そして再び、窓枠で区切られた風景を眺める。
またか……
ブチャラティがやるせない表情を浮かべながら、向かい側の空いている席に腰を下ろす。
『私、ミスタと付き合ってるの──』
少し照れたように話してくれた日の事をふと思い出す。
ミスタからもそれとなく、話は聞いていた
要らぬ世話とは思いつつも、女遊びも大概にしておけと、釘を刺してはおいたのだが……男の本質はそう簡単には治らない。
もちろんナマエも、ミスタと付き合うと言うことは、それ相応の諸事情もある程度は覚悟の上だとは思うが……やはり、女絡みの内情で2人が言い争う姿を時折目にしていた。
近頃はその頻度が増したようにも感じ、些いささか気にはしていたのだ。