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49番目のあなた【D.Gray-man】

第8章  前兆




あれから、馬車の中では穏やかに過ごした。







「俺、勝手に屋敷に上がっていいんさ?」

ディックはキョロキョロと、倹約家のすみれからは考えられない、絢爛豪華な調度品で埋め尽くされた屋敷を見回す。


いつも書庫室で(しかもディックは窓の外から)会っていたため、ちゃんと屋敷に上がってもらうのは初めてだった。


「お客様だもの。お祝いしようって、言ったじゃない!」
今夜は、叔父様と叔母様も外出中でいない。
へ、変な意味じゃないんだからね…ッ?!


「ディックは、ここで待っててね?」

「おー」

ディックを客間のテーブル席に座らせると、すみれはいそいそと部屋を出て行った。









すみれは屋敷地下の厨房へ行く。
何人かのコック達に会うも、手伝いは不要と断った。


大きな大きな冷蔵庫から、
2人用サイズの、小さな小さなフルーツケーキを取りだす。



(ディック、喜んでくれるかな…)


ケーキに何本か蝋燭を差し火をつけると、ポウ…と、周囲が暖かく包まれたような気持ちになった。


(…ううん、喜んでくれなくても。
私が、祝いたいだけだ。)




私と出逢ってくれて ありがとう

楽しい毎日を 恋する幸せも切なさも
たくさんの喜びを ありがとう






生まれてきてくれて ありがとうーーーーー



(……お誕生日おめでとう、ディック)




すみれはケーキを落とさぬよう、そっ…とお皿を両手で持ち、厨房を出て行った。


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