第8章 前兆
今は、お茶会にお邪魔している。
そう、今日はあのティキ・ミック候からお呼ばれしたお茶会に来ているのだ。
(叔母様に、参加したくないって、何度も頼んだけど、聞く耳持たずだったわ…)
叔母様の否定のしようなんて、凄かった。
見たことないぐらい、怒りと動揺でわなわなと震えていた。
「信じられない!この子は…!!」って何度も何度もーーーー
「おや?すみれ令嬢の紅茶の進みが遅いようですが、お口に合いませんでしたか?」
ジェントルマンな上っ面で声を掛けてくれたのは
主催者のティキ、だ。
「とんでもない!素敵な香りのお紅茶なので、香りを楽しんでおりましたの。」
ふふふ、と他所行きの笑顔でティキに答える。
お茶の香りなんて、全く!
楽しんで!!
いないから!!!
お茶会はティキだけではなく、有名な家柄の御子息・御令嬢達もいる。
そのため、ティキと本来の砕けた会話はしていない。
主催のティキに呼ばれた彼らの話し声は、とても楽しそうだ。
「あそこのお店は…」
「まあ、そうなんですの。」
「素敵ななドレスで…」
それにしても、周囲の会話が全く耳に入ってこない。
ああ、一刻も早く帰りたい。
こんな大切な日に、何でお茶会なんて…っ
(だって、今日はーーーーーーーーーー)
8月10日。
ディックの、誕生日である。