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49番目のあなた【D.Gray-man】

第7章  嘘



すみれは部屋を出て行く際、一度こちらをふり返って手を振ってきた。
それに応えるよう、照れを隠すため気怠そうに振り返すも、すみれは嬉しそうに笑って出て行った。


もう、何なんさ…

可愛い、と思ってしまう自分がいる。




ヤキモチを露骨に妬いてしまった自分に吃驚した。

(っていうか…)

指摘されるまで気づかなかった自分に、一番吃驚している。



『私の1番のイケメンはディックだからね?』

『ディックとこうしてる時間が一番好き。』



すみれの言葉を思い出し、空を仰ぐ。
そんな言葉一つ二つで機嫌良くなる俺って…情けないけど、


「…現金な奴、さね」

思わずぽつり、とひとり言を呟く。
それにしても、こんなに気持ちを乱されるのは性に合わない。

(すみれのやつ、途中で笑うの堪えてやがった…)


それを思い出すと、少しムッとしてしまう。
すみれの些細なことは、すぐわかるようになった。
まるで、子供扱いされたような気になる。
きっとすみれはそんなつもりじゃなかったとしても。

(あーちくしょ…)


こんなんじゃ駄目だ。
気持ちを落ち着けるために、すみれが持ってきた文献や新聞に目を通すことにした。




* * *




ガチャッ

しばらくすると、ドアの開いた音がした。
おそらくすみれが戻ってきたのだろう、読んでいた新聞から視線を外し、覗き込むようにドアの方を見る。

「すみれ?遅かっ…」

「ごめん、遅くなっちゃって!」


そこには両腕に、大量に手紙を抱えたすみれがいた。

「どうしたんさ、この手紙の数!」

「他の手紙と混ざっちゃって…」

ディックを待たせたままは悪いなって思って持ってきたの、と苦笑いですみれは頬をかいている。

「俺も宛名見ていいなら、探すさ」

「!ありがとう!大丈夫だよ!」



二人で宛名の確認をしていく。
宛名を見ると大半が

「…男、さね。」
また黒いモヤモヤした気持ちが広がっていく。

「ん?何か言った?」

「いや、別に。こんなに手紙のやり取りしてて、大変だなって思っただけ。」

「殆どが社交辞令だからね。書いてくれた人も大変だよねえ」


他人事のようにすみれは言う。
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