第7章 嘘
「ふーーん。…まあ、貴族界は繋がりとか付き合いとか、大事だし?仕方ねえよな」
あからさまに不機嫌全開でブスッとしたディックは、頬杖をついている。
「そうなんだよね。ティキってうちより家柄凄いし。叔母様、そうゆうのに厳しくって」
「…てか、アイツのこと親しげに呼んでるんさね?」
さっきから、ディックの一言一言にトゲがある、気がする。
やたらティキの名だけ反応している。
「そんなこと!…あるかも、だけど」
「……手ぇ出されそうになったくせに…」
「そ、それは!!……何でだろうね」
「もっと危機感持った方がいいんじゃねーの?」
これは、もしかして。
「ねえ、ディック」
「何さ」
「…やきもち、妬いてる?」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…な"ッ!」
だいぶ遅れて反応が出る。
今更になってディックの顔が赤く染まっていく。
言葉が見つからないのか、口をぱくぱくさせている姿は金魚のようだ。
流石の私も、わかる。
ヤキモチを妬いてくれていたようだ。
「そんなに心配してくれなくて、大丈夫だよ?」
「そういうんじゃ、なくて!俺は…そのっ」
「うんうん、私も大人だからね。自分の身は自分で守るよ。」
「アイツのことが…そう、気にいらないだけで!」
(か…可愛いっ!ディックに言ったら悪いし、怒られるから言えないけど、可愛すぎるっ!!)
いつも大人びているディックが、こんな風に取り乱すなんて。
普段饒舌な彼が、言葉に詰まり辿々しい。
こんな年相応の一面があったとは。
それに、私にヤキモチ妬いてくれるなんて。
嬉しすぎる。
にやけちゃ駄目、笑っちゃ駄目
耐えるんだ、私!
「ティキ、イケメンだったもんねえ」
「ぅ"…そんなこと知らないさ」
「でも、私の1番のイケメンはディックだからね?」
「!」
「ディックとこうしてる時間が一番好き。お茶会には行かなきゃいけないけど、なるべく早く帰ってくるね。」
「…」
「…ディック?」
ディックの反応がない。
「…いつ」
「え?」
「お茶会の日時、教えて。…あと場所も。」
「うん」
「…待ってるからな」
「ありがとう。じゃあ、招待状で確認してくるから、待ってて?」
そういうとすみれは席を立ち、部屋から出て行った。